Archive for the ‘うんちく集’ Category

『ナワバリ アユ』はなぜ黄色い?

木曜日, 1月 13th, 2011

友釣りで釣ったばかりの鮎は、「まっ黄色!」と叫びたくなるほど黄色みが強いことがあります。

胸の黄斑だけではなく、ヒレの縁辺りまでもが黄色に染まる。東部の黄斑がはちまきを巻いたように見える鮎さえいます。

こういった体表の黄色は、ナワバリアユのトレードマークのように思われてきました。

しかし、鮎のナワバリと体色の黄色は必ずしも関係はないようです。

というのも、全く攻撃行動をしないのに黄色い鮎を見かけることがあるし、まれにではあるが、まっ黄色な鮎が群がって仲良くエサを食べていることもあります。皆さんの中にも「入れ掛かり」なのに釣れる鮎は黄色くないという経験をされた方がいるのではないでしょうか。

では、鮎はなぜ黄色くなるのでしょうか?

京都薬科大におられた松野先生によると、鮎の体表の黄色はゼアキサンチンというカロテノイド系の色素に由来している。

この色素はコケ(付着藻類)に含まれていて、鮎が食べることで体内に取り込まれ、体表に黄色みが出ます。

興味深いことに、このゼアキサンチンは、コケのなかでもラン藻に含まれていて、鮎の主食のように言われるケイ藻には全く含まれていません。

ケイ藻ばかり食べている鮎は、黄色くならないのです。鮎の主食はケイ藻とよく言われますが、むしろ主食はラン藻と言う方が正解でしょう。

それはともかく、黄色みが強いナワバリ鮎は、ラン藻を沢山食べているということになるのです。何故なのでしょうか?

この仕組みを中央水産研究所の阿部さんらが解き明かしています。

阿部さんらによると、鮎がいない状態では、川の石の表面にはケイ藻が多いのだが、鮎がコケを食べ始めるとケイ藻は減少し、かわって糸状のラン藻の群落へと変化する。

ケイ藻は鮎に食べられると急激に少なくなるのに対して、ラン藻はむしろ増殖スピードが上がるために、ラン藻が選択的に残るのである。ナワバリ鮎は一定の場所のコケを食べるので、ナワバリ内はラン藻が選択的に残るのである。ナワバリア鮎は一定の場所のコケを食べるので、ナワバリ内はラン藻の卓越したエサ場になりやすい。その為ラン藻に含まれるゼアキサンチンを多く取ることになり、結果として体表の黄色みが強くなるのだそうです。

おまけにラン藻は、ケイ藻に比べてたんぱく質の含有量が多くカロリーも高いらしい。ナワバリ鮎の成長が良いのは、単にエサを独占している為ではなくて、エサの質が良いことも関係しているのかもしれません。

さらに付け加えると、鮎は黄色を識別する能力に優れています。ナワバリ鮎が黄色くなることで識別が容易になり、ナワバリ鮎同士の無用な喧嘩を避けることができるし、群れ鮎の侵入を防ぐことにも役立つと言われています。こう考えると、ナワバリ鮎が黄色くなることは、鮎にとってはやはり意味があります。鮎の体色ひとつにも、自然の合理性が隠されているのです。

『那珂川・天然遡上鮎』について

木曜日, 1月 13th, 2011

天然鮎の遡上数、釣り人の数から日本一の鮎釣り場といわれる那珂川。

かつて、鮎河川御三家といえば、那珂川・鬼怒川・狩野川を指し、三川の鮎の遡上具合が、その年の釣り業界の景気をも左右したほどでした。

しかし、御三家の中で往年の人気を維持しているのは、那珂川だけであります。

他の河川には、ダムや堰(せき)ができてしまい、それらが結果的に年魚ともよばれ、回遊魚でもある鮎の生態に大きな影響を及ぼしているからです。

一般的には、天然鮎というと、四国の四万十川・九州の球磨川・中部の長良川 等が有名ですが、数年前におこなった(財)日本釣振興会が①天然遡上の鮎が多い ②釣り人の受け入れ態勢が良い ③姿・風味の良い鮎が育つということを基準にして選定した「天然鮎ののぼる100名川」によると、那珂川がダントツの一位に選ばれています。

このことは、関係者の中でも、がまかつトーナメントやダイワマスターズ等で全国の河川で戦う一部のトーナメンターや関係者にしか知らされてませんでしたが、霞が浦導水事業の反対運動により、全国の漁協関係者や、漁業者などに広く知られるようになりました。

ちなみに、その年の遡上漁獲量を申しますと、

1位・那珂川水系   421,686 kg

2位・相模川水系   277,030 kg

3位・久慈川水系   268,897 kg

4位・球磨川水系   201,487 kg

5位・吉野川水系   172,730 kg

6位・四万十川水系  168,477 kg

長良川は、河口堰が出来てから、漁獲量が10分の1に減少したため、10位以内に入っていません。そして、北関東東部の2河川が1位と3位に入っているのは、大変興味深いことだと思います。

かつて、日本の川には沢山の鮎がいました。しかし、蔓延する冷水病・次々と完成するダムや堰など、鮎を取り巻く状況はかなり厳しいものとなっています。その為、多くの河川では放流に頼らざるを得なかったのが現状であると思います。

だが、本当にそれでいいのでしょうか?

今回は、天然鮎を増やすために、どうしたら良いかということについて述べたいと思います。

最近は、鮎種苗を放流するだけでは漁場作りがうまく行かなくなったこともあり、天然鮎を増やそうという河川が増えてきました。これまで、あまりにも放流に頼りすぎていたことを思うと、やっと本来の形に近づいてきたのかも知れません。

何よりも天然鮎が沢山遡上できる環境を取り戻すことは、私たちの故郷を考える上でも不可欠なことだと思います。

天然鮎を増やすためには、やらなければならない事が沢山あるのですが、まず球磨川の例を挙げますと、何をやったかと言うと、産卵する為に瀬に付いた鮎を獲り、シュロの木のネット状の物に卵をふきつけ、それに受精させて上流に持っていきます。

なぜ上流なのかというと、下流よりも上流のほうが水がきれいだからです。そこで、ふ化する直前まで卵にかかった砂や葉などを払い落しながら面倒をみます。そして、それから河口まで水槽付きトラックで運びふ化させます。

鮎の卵は、だいたい積算温度が200度~210度でふ化します。例えば水温15度なら14日でふ化します。そこから、河口の汽水域までたどり着き、ワムシというプランクトンを食べないと死んでしまいます。(ふ化したばかりは泳ぐというより、そこまで川の流れにのり、流されて行くという感じだと思います。ですから、澱(よど)みに入ってしまったりした種苗は、餓死または他の魚の餌食になります)

そうして、海や汽水域で冬を越し春に川を遡上してきます。

球磨川には大きな堰が2つありますが、遡上時期は組合員が網などで鮎を上流部に汲み上げています。これを3年続けて行ったら、瀕死の球磨川が蘇りました。

今までは、巨鮎の釣れる川として全国的に有名になったのです。

このように人工的に種苗を生産し放流するのではなく、自然のサイクルの中の一部を手助けしてやるようなやり方のほうが、効果的だということが分かります。

コストパフォーマンスからも、また、地域住民たちの協力で川を再生させるのですから、自分たちが作った川、再生させた川ということで川に対する愛着も違うと思います。

では、那珂川ではどういう方法が良いかというと、まずは、産卵場の造成・整備が一番良い方法なのではないかと思います。皆さんも、テレビなどで鮎の産卵などを見たことがあると思いますが、メスの周りに沢山のオスがいます。しかし、実際、卵に受精させているのは、1~2尾のオスでその他は、卵を食べに来ているのです。産卵場で捕まえた鮎の腹の中には、100個以上の卵を食べている例もあるのです。あまり知られていませんが、鮎の卵が鮎に食べられる量というのは、かなり多いのです。

心配なことに、こういった「食卵行動」の被害は、近年大きくなっているようです。なぜならば、本来は小石の間に深く埋もれているはずの卵が、川底の表面近くに付着するようになり、食べられ易い状態になっているためです。この原因は、川の環境悪化にあります。

鮎の産卵場は、多くの場合いわゆる、瀬という浮石状態の川床に形成されます。浮石川床というのは、小石のすき間がたくさんある状態のことです。この状態だと、鮎が卵を産むとかなり下のほうまで卵が入って行って石に付着します。川がまだ健康であった30年くらい前、その深さは、大体15㎝~20㎝くらいでありました。それくらい埋まっていると卵が石で守られて、食べられにくくなるし、ちょっと水が出たくらいでは流されません。

ところが最近、山の崩壊とか河川工事とかいろんな理由でこの浮石状態の川床がなくなりつつあります。

石の隙間に砂や泥が入って、目詰まりを起こしているのです。ダムを作ってから30年以上経過した川では、上流から砂利が流れてこない為に、小石底そのものが失われていることもあります。そういう川で卵が埋没している深さを測るとわずか、3㎝~5㎝しかないことが多いのです。こういった理由から、産卵に好適な浮石底を復活させるために造成が必要になってくるのです。

造成の大まかな手順ですが、まずは場所の選定です。産卵時期前、抱卵したメスが集まっているトロや渕を確認したうえで、その近くで造成を行うようにします。

卵を産む場所に関しては、鮎なりの選択基準が存在しますので、人間の都合で造成しても鮎に見向きもされません。

次は時期ですが、産卵直前が望ましいのですが、これは年によって異なるもので、水温が20度以下になる時期を目安にします。造成の方法は、要は産卵の邪魔になる砂と泥を洗い流せば良いのです。ブルトーザーやユンボなどの機械を使って川床を掘り起こせば、砂と泥は簡単に取り去ることは出来ます。直径20㎝以上の石も産卵の邪魔になるので、取り除いたほうがよいです。

見落としやすいのは、川床を重機で掘り起こした時にできる起状の処置です。

鮎は川床に残る「でこぼこ」を嫌うので、最後の仕上げは、鍬やグランド整備用のトンボを使って出来るだけフラットにならします。

このような作業で実際に高知県の奈半利川(なはりがわ)で、造成の成功によって、鮎の仔魚の流下数が飛躍的に増えました。大きな効果があるのは確かです。

鳥取県の日野川では、10月の第1日曜日を産卵場造成の日という記念日に決めました。

この造成には、今でも100人近い造成人が集まります。漁協はもちろんのこと、釣人・行政・土木会社など、顔ぶれは多彩で、中には県外から駆けつけてくれたご夫婦もいるそうです。

このイベントには、鮎に卵を産んでもらう以上の意味があると思います。この造成作業を通じて、川が抱えている問題、鮎など魚類の苦しみなど、釣りをしているだけでは、あるいは、川を眺めているだけでは気づかない様々な問題を実感できるからです。こういったことは、鮎を取り巻く環境を良くする事につながっていくと思うし、なにより自分が汗を流したことで、鮎が増えたとなれば、川や鮎に対する愛着を、より強く感じるのではないでしょうか?

最初に述べましたように、那珂川は日本一の川です。この貴重な資源をこれからも守り続けて行く為、漁協・行政・地域住民が一緒になって、このちょっとした川への手助けをしてやらなければならないと思います。

5年後、10年後この那珂川をどのようにして行くのかということを真剣に考えていかなければならないのです。

鮎のうんちく

水曜日, 4月 14th, 2010

『天然鮎の条件とは』

川から水揚げされる鮎のことをすべて「天然鮎」というのは正しくありません。

なぜなら、国内の多くの河川では、春(3~5月)に人工種苗もしくは琵琶湖産の稚魚を放流しているからです。林屋ではこれらを「放流もの」と呼び、海から遡上してくる天然鮎とは別扱いにしています。

国内の河川の中でも那珂川の天然率は非常に高く、およそ9割が天然鮎という調査結果が発表されました。栃木県水産試験場では1994年6月~10月にかけて、黒羽、小川、烏山、茂木の4地区で、漁業関係者が友釣りで釣った鮎を15日おきにサンプリングする一大調査を実施。釣り上げた鮎をくわしく調べた結果、9割が天然遡上の鮎と判別されました。この調査により、那珂川の鮎の生産力の多さに驚くとともに、さまざまな種類の魚が豊富に生息する関東屈指の清流であることがはっきりしました。

『鮎は栄養価の高い理想的な食材』

鮎は栄養価が非常に高い魚です。良質のタンパク質はもちろん、カルシウムやリン、鉄分が豊富で、ビタミン類もバランスよく含まれています。100グラム中に18グラムほど含まれるタンパク質は、煮ても焼いても変化しません。1匹食べるだけで成人が1日に必要とするタンパク質量の4分の1を摂取できます。

また、人体構成に必要な必須アミノ酸の含有量も理想的です。

鰻のうんちく

日曜日, 11月 30th, 2008

『”旅”をする鰻。謎多き生態が明らかに』

 鰻は古代から、日本人の食の対象となってきた魚です。しかし、どこで生まれるのか知る由もなく、生態に関してわからないことが多い謎多き魚でした。

日本では昔から「山芋転じて鰻になる」などかなりいい加減なことが言われ、また、かのアリストテレスでさえ、「鰻は泥の中から自然発生する」と言ったほどです。

 動物の”旅”は生物界に多く見られる生命現象ですが、その旅のルートや目的地さえはっきりしないケースが多いのも事実。外洋の産卵場と河川の成育場の間を数千キロも回遊する鰻もその1つです。

こうして長い間謎とされてきた鰻の産卵場が、2005年6月、東京大学海洋研究所の塚本勝巳教授によりピンポイントで発見されました。その場所は北緯15度、東経142.5度の地点で、わかりやすく言うと、グァム島西側のスルガ海山というところです。「海山」とは文字通り海の中にある山のことで、富士山のような山があると想像してください。そこが産卵場となり、日本から約2000キロ離れています。

産卵時期については、夏の新月に産卵することがこれまでの研究で明らかとなりました。鰻は5~7月の夏の新月に産卵(月周期・同期産卵)し、北赤道海流を経てフィリピン辺りから北上する黒潮(日本海流)にのり、台湾を通って約半年かけて日本に到達します。その後、各河川を遡上。性別や個体差はありますがおよそ10~15年ほど淡水で成育し、体が成熟すると秋の台風などで増水したときに川を下り、半年ほどかけて小笠原諸島、硫黄島などの東日本火山帯に沿って南下。その先にある海底山脈沿いに約2000キロ泳ぎ、産卵場であるスルガ海山にたどり着きます。

『体の色が変化する天然鰻の不思議』

天然鰻は背がオリーブグリーン、腹は黄色味を帯びた白です。成熟して川を下るとき、シルバーブラックとも呼べる銀化した個体が親魚となります。

2000キロにもおよぶ旅の途中、天然鰻は深い海のどの辺りを泳いでいるのでしょうか。表層は敵が多く危険であり、低層は水温が1~1.5度と低くなるため長期にわたる移動には向きません。中層となる水深200メートル地点の海中の明るさは0.1ルクスほどしかなく、この明るさは人間が慣れてくるとようやく見える程度のもの。鰻は0.01ルクスまで見えるとされ、また、銀化した鰻は目が大きくなり、浮き袋を調整する筋肉がより発達するという理由から、水深200メートルほどの中層を泳いでいると考えられています。

『国産鰻が貴重なわけ』

2007年の1年間に国内で消費された鰻の総量は約10万トン。そのうち国産物が約2万トン、輸入物が約8万トンとなっています。この数字を見ても国産鰻が貴重であることがわかりますが、国産鰻の原点であるシラスウナギの現状に着目してみると、事態はもっと深刻です。

 近年、ヨーロッパ種のシラスウナギは全盛期のわずか1%ほどしか採捕できなくなりました。まさに絶滅危惧種であり、日本古来の鰻であるアンギラジャポニカ種も全盛期の10%程度にまで落ち込んでいます。

以上のような状況の中、今後、鰻の回遊生態や産卵生態がよりくわしく解明されれば、鰻の完全養殖が可能となり、ひいては水産資源の保護にも役立つと期待されています。

ちなみに、鮭は1匹で約3000粒の卵を持っていますが、鰻は1匹で100~300万粒の卵を持つなどその繁殖能力は十分。過度の漁獲を制限すれば、シラスウナギの個体数は短期間で元に戻るはず。今後しばらくの間は乱獲を制限し、鰻が増えるのを見守っていかなければなりません。

『鰻は栄養がてんこ盛り』

何千キロも海を泳いで旅する鰻はエネルギーの塊。栄養価が高いことはだれしもが知るところです。肝臓や視力回復に効くビタミンA、疲労回復と食欲増進を促すビタミンB1、若返りの効果があるとされるビタミンE、脳細胞を活性化するDHA、肌をすべすべにするコラーゲンなど、その効能は計り知れません。ちなみに、鰻にかける山椒には、鰻の臭み消すほか、胃酸に働きかけ消化を助ける効果があります。

鰻料理はスタミナ食のイメージがありますが、鰻丼1杯のエネルギー量では約500キロカロリーと意外にも少なめ。ダイエット中の方でも安心して食べられる”ジャパニーズ・パワーフード”の代表格です。

『なぜ、鰻に刺身はないのか』

鰻の血液中にはイクシオトキシンというタンパク質毒が存在しています。この毒は溶血性であるために、目に入ると粘膜を刺激して結膜炎を起こしたり、傷口に入れば炎症を起こします。口から入った場合は吐き気や中毒症状を引き起こします。ちなみに、体重15キロの犬に鰻の血清を0.5グラム注入すると、けいれんが始まり、やがては呼吸困難となります。

ただし、このイクシオトキシンは熱に弱く、加熱により失活するので、白焼きや蒲焼きは安心してお召し上がりください。

『関東風と関西風の違い』

余談ですが、平賀源内もしくは山東京伝が鰻屋より依頼を受けて、「本日土用丑の日、鰻の日」と店先に大書きしたところ、それが評判となったのが土用の丑の日の始まりとされています。

さて、蒲焼きの調理法には関東風と関西風があるのはご存じの通りです。関東風は鰻を背開きにしてから焼き、それを蒸してからタレを付けて再び焼きます。一方、関西風は腹開きにして焼き、蒸さないまま蒲焼きにします。

背開きと腹開きの違いは戦国時代に端を発します。関東は武士の数が多く、切腹を連想させる腹開きを避け、背開きになったという説があります。